中小企業の在り方が日本を変える

中小企業は当たり前のことが、当たり前に出来ない

大学を卒業してから働くようになって20年が経過した。卒業年が2000年という就職氷河期にあたってしまった自分は、大学3年から就職活動をしてみたが、結局どこも受からなかった。

運よく最初に決まったのは、米国にある日本政府の関連組織。事務職をアルバイトから始めた。米国でのビザが下りるまでは、学生ビザについている就労ビザで時間給で働いた。しかし、方針が一変し、永住権以外の人は雇用しないと決まってしまったのだ。

その当時は、何と運が悪いんだろう、と悩んだものだが、今思うとあそこに決まらなかったお陰で、様々な企業で働くことができていると思えるからだ。

強いて今思うもう少し見てみたかった風景は、いわゆる大企業から見る景色だ。

自分の経歴は

2000年に米国大学卒業後

  1. 米国にある日本政府の関連組織
  2. 日本教育機関の海外法人(政府系)
  3. 米国企業(オーナー企業、IT系)
  4. 日系商社アメリカ法人
  5. 日系メーカーアメリカ法人

日本へ帰国

 6. 英系メーカー日本法人

    7. 日系専門商社

    8. 外資系日本法人(Health Care)

    9. 外資系メーカー日本法人(総合的)

という感じでまるでJob Hopperに見える程、多岐に亘る。業界もばらばら。日系商社米国法人からは営業一本。英系メーカーからマーケティングを経験し、ヘルスケアの外資系日本法人の時に、再度営業へ。総合的な商品を扱う外資系メーカー日本法人では、事業開発を担当し、営業マンからは卒業する。

4、5、6、9はグループとしては大企業だが、法人オフィスは、20名もいないくらいだった。後に増えはしたが100名を超えることはなかったため、組織の運営の仕方は中小企業と言って間違いない。

以下4点が中小企業によくある実情と言われているが

  1. 価値観がバラバラ
  2. 人なし、モノなし、金なし、管理なし
  3. 兼任尽くし 
  4. 基盤がぜい弱

まさにその通りだった。

学べることは、全て自分で動くため豊富な経験を得られることだが、悪いことを言えば、疲労が溜まるだけで前になかなか進まないという点だ。

いいことは、あまり口出ししない中小企業もあった。まさに自由にできる。しかし、ルールが徹底されていないため、自分が当たり前だと思ってやってきたことが、実は違ったなんて言う問題も起こった。

 

中小企業の実態として共通して言えるのは

 

  1. 経営方針、経営理念が分からない
  2. 経営状態が不安定
  3. 経営者が思い付きの経営スタイル
  4. コミュニケーション不足の断絶

正直、大企業の法人という場合は、経営方針、経営理念はグループ会社としてはある。しかし、法人会社によくあることは、共有されていない事。もともと、法人事務所は、いい言い方をすれば、本社で出世をするための過程として実績を出させるための事務所と、お払い箱の対象になった人を送り込む事務所としての2つの位置づけがある。

自分がいたところは、そうではないと信じたいが、実情は今でも分からない。その法人を経て大きく飛躍した人はいないからだ。

全て大企業の子会社だとは言え、上記4つの状況は変わらずあった。

 

 

自分が営業マンだった頃は、仕事の多忙感を感じることが多かった。

無駄が多かったのだと思うが、幹部や経営者はその無駄には無関心だった。営業に出て入れさえすれば仕事をしていると思い込んでいたのだ。出張をして、出張の報告書があれば、仕事をしていると満足していたに過ぎない。

出張は、行った先でその出張費を取り戻せる程の見込が将来的になければ、あまり意味がないと考える。日本の文化的に、対面で挨拶をして相手のニーズを聞き出し、それを満たすサービスを提供して利益を得る流れになるのであれば、無駄ではないと思うが、9割型、とにかくもっと営業で回れと上から言われて、無理やりアポを入れて1件をカウントするためにアポを入れている人も少なくないと思う。

受け身の営業を私は悪くないと思っているのだが、理由は欲しいという問い合わせがあったり、Googleで検索をした人というのは、買うまでもう一歩のところにいる。こういう人たちに出張などの経費を使えばいいのであって、無理やり仕事をしている実績を残すためにあったところで買うところまで行きつかない。

電話で新規を獲得しろと言われて、獲得できないなら解雇だ、くらいまで言われ、休日返上で電話をしまくったことがあるが、数十件電話して、数件が話を聞いてくれる状況、100件近くでやっとアポが数件入るくらいの確率だった。

営業マンがそういう結果だったので、会社はアシスタント二人をつけて各100件ずつのテレアポを入れさせた。200件電話しても10件も取れない。ここでようやく社長は、テレアポの効率の悪さを実感した。何度も効率が悪いと伝えたが話を聞いてくれなかった。

大企業であれば、話し方のプロにこういう仕事をさせている。外注させている。外注させる経費がないから社員にやらせてというのが中小企業の特徴だ。やらせた結果、いい結果が出ればいいが、概ね結果は出ていない。

何故結果が出なかったか?

社長も法人の雇われ社長に過ぎないため、上から言われて仕方なく部下に命令をしていたにすぎないからだ。社長自体にビジョンがなく、今月の数字が目標を達成すればいいというところがゴールだったからだ。

月の目標はゴールではなく、マイルストーンに過ぎない。年間の目標も長期計画のマイルストーンに過ぎない。しかし、上からの指示が、月の目標があたかもゴールであるかのように言われるため、ゴールとマイルストーンの違いが分からなくなっている。だからこそ、会社の使命というものが必要になる。なんのために存在しているのか、それが商売を始めた元々の意味。それを軽視すると、大抵組織は崩壊していく。そういう雇われ社長の下でしか殆ど働いたことがない、というのが今の自分の物足りなさである。

メーカーの米国法人で働いていると、グループのトップが毎年訪問する。本社の人間であれば直接会うことは叶わない人も、毎年お手伝いのためにお話を聞くことが許されるのだ。正直、グループの社長のまともさと言ったらない、というのが感想。同じ社長でどうしてもこうも違うのか、としか表現できないほど、下の人間のことまでよく分かっている。現場の人間の心理状態をよく理解していた。そのため学べることが沢山あった。今でも非常に感謝している。

 

中小企業は、以下6つの項目が欠けていることが多い。あっても徹底していないところも多いだろう。自分の経験上、海外で働いたオーナー企業(200人規模)では1はしない。2は追々教えていく会社だった。3は徹底していた。4は、忠誠心が高まるように従業員に手厚いご褒美をくれた。5も共有があり、新しい進捗が楽しみだった。6はなかった。きっと幹部レベルや、本流のビジネス部門にはあっただろう。

  1. 躾作り
  2. ルール基準作り
  3. 道しるべづくり
  4. 人財づくり
  5. 明日の種づくり
  6. セオリーづくり

いずれにしても、国内の中小企業の膿は、過去の習慣や栄光から脱却できない考え方にあると言える。経営者の時計がある時代で止まったまま。効率や質が悪くとも、淘汰されず生き残れてしまうのも日本の問題だと考える。

淘汰される危機感がないからこそ、本気で改善できていないのだと思う。 自分はあと20年しか働けないだろう。その間に、未来に最も近い業態の企業で働きたいと願う。