子育てと部下との関わり合い

今3歳と1歳の子供がいるんだけど、子育てをしていると、部下との関りあいに関して多くのヒントを発見することが出来る。

部下が年下の場合は自分と子供。部下が年上の場合は、自分と父親又は母親をあてはめてみると、そこに答えが多く眠っていることが分かる。

部下が年下の場合

子供が3歳くらいになると話すようになる。うちの子の場合は、妻が外国籍なのもありはっきりと分かる日本語はまだ完全には話せない。だからこそ、多くのヒントを得られた。

どんな親も自分の子供に対してイライラする瞬間や、要領のいいやり方を教えても、そのやり方をやらなかったり、食べることに集中すればすぐに食べ終わるのに、テレビや動画を見ていることで、食べ終わるのが遅いときにイライラしたり、様々だ。

筆者が感じたヒントをいくつか挙げてみる。

作業のスピードが遅い

ある作業をしている時に、「こうやるんだよ」と教えても、その通りにやらない。でも本人には、本人なりのやり方がある。こうやらなければいけない、と考えているのは、既にそれが何をするものなのかが経験的に分かっているから。でも、子供は今まさに、それが何なのかを体験し始め、覚え始め、学んでいる最中なのだ。自分で覚えていくのと人の言われるままにやっているのでは、理解の深さが異なってくると筆者は思う。

それを大人は、「そうじゃないのに」とイライラしながら見てしまう。多くの上司という方々が、自分のやってきたやり方通りに部下がやらないことにいら依頼している人が多くいる。これは、自分の期待した時期に期待通りにできたものが出来上がっていないことに対するストレスだ。

同じ体験を子供が食べている時に経験した。
食べるのが遅い

子供が「ヌードルが食べたい」というので作ってあげた。出来上がり小さなフォークと一緒に半分に切ったヌードルを茶碗に入れて差し出す。本人は、フォークを使わず、一本ずつ口に入れて、動画を見ながら食べている。

隣で見ていると、動画を見ているがゆえにヌードルの減りが遅い。食べているより見ている時間の方が長いためだ。筆者は既に食べ終わり、次の作業をしていても、まだ1本ずつ食べて動画を見ている。しかし、アクションは継続的に行われている。

結局、筆者は自分の作業を進めて、どうせまた残すのだろうと思いながら気にしないようにしている。ふと見ると、もう食べていないので、また残したか、と思い茶碗を取りに行くと綺麗に食べ終わっている。

つまり、大人が子供を見る時に、自分の時間軸で評価をしてはいけないという事。年下で経験が浅い部下であれば、まだラーニングステージだし、本人も失敗をしながら覚えていくものだ。何でそのやり方がいいのかが分からず、要領のいいやり方をするよりも、まわりまわって、なぜそのやり方が一番いいのかを理解した上で、そのやり方をすることで身についていく。

子供見ていてたまにイラつく自分を自省する瞬間が沢山ある。実に自分と部下との関わり合いにおいて必要な考え方だと思った。

おもちゃの遊び方が本来と違う

どの子供もおもちゃを買ってとせがむことがあるだろう。せがまれなくとも、親の方から買うこともあるだろう。でも、よく見ると、おもちゃの本来の遊び方と違い、結局ただ散らかるだけのことが多い。

これは、部下に説明もろくにせずに仕事を振り、部下が上司が期待した通りの仕上げ方をしなかった場合とよく似ている。

それなりに経験のある部下であれば、分からないことは今の時代であれば、検索したりして調べることもあるだろうし、分からないところを上司に都度聞く人もいるだろう。しかし、消極的な部下や同僚もいるだろうし、聞いたら怒鳴られそうだから、聞きずらいと思っている人もいる。

上司も大人も、期待をした仕事を求めるなら、それ相応の説明義務があることを忘れてはいけない。

よく転職してきた新入社員に対して、即戦力として雇ったんだから、言わなくてもできて当たり前という上司は多い。筆者は、それに対しては否定派だ。常識的なことはできても、その会社での期待や要求は教えなくては伝わらない。大抵、新入社員が期待に応えられない場合、その会社には、その部署や役割が定められていなかったり、ビジョンが定められていなかったり、研修や教育が提供されていなかったりする。

そういう企業は、恐らく7割くらいある。中小企業の場合、まずしっかりと定められたのはないと思って間違いない。筆者は、転職した全ての企業で教えてもらうということはなかった。基本的に、先輩についていき、見よう見まねで自分が引き継いでいく、というのを繰り返していった。

前任が既に退職している場合は、お恥ずかしながら、顧客に今までの流れを聞いたりしたものだ。

ただ、海外の会社は、そういうのが普通だ。基本的にTraningはない。


言っていることが伝わらない

子供は、色々説明したところで、理解しているのは、最後に話した短い文章の部分だけだ。何で何度言っても分からないの?と言っている親は沢山いると思う。筆者も口に出して言わなくとも、何度も心の中では思ったことはある。

大人は、自分の理解レベルで子供と話しているかもしれないが、子供には、理解できる言葉の表現数が限られているわけだから、その範囲内で伝えないといけない。短い文章なら子供も理解できる。

娘がまだしゃべる始めた時、あまり単語が分からなかったので、何かのやり方を教える時、「こうやって、こうやる」とだけ言って、見せていた。

いつの間にか、娘は「パパ、これは、こうやってこうやる」と繰り返し言いながら、色々と見せてくれるようになった。

あまり文章にはなっていないが、意思疎通が本来の目的なのでそれでいいと思う。

これも、上司と部下のコミュニケーションと同じだ。あるいは、経験のある人とない人とのコミュニケーションと同じ。経験が多い人は、少ない説明で勘が働くし、何を言わんとしているのかがすぐ分かるだろう。しかし、経験の少ない人からしてみれば、話の前段が概念にないので、ショートカットで説明をされても分からない。

これは、年下でも年上過ぎる部下であっても同じことだ

ITの時代に生きてこなかった人材に、突然紙の使用を禁止され、「データは全てクラウドに入っています」と言われても、「クラウド?」となる。「IoT」って書かれてあっても「何、この絵文字?」か「イオテー?」って思うだろうし、「IT」も「イットって何のこと?」と言っていた時代はあるはず。筆者の父は、引退するまで、PCに触ったことがない。経営者だったが、Eメールはプリントアウトしてもらい、返信は手書きをしたものをタイプしてもらっていたという。ガラケーですら受信しか出来ない。

年配者も概念が難しいというよりは、新しい概念を分かっている概念を使って説明してもらえれば分かるはずだと思っている。だから、教える側が変にプロだと分かっている人の言葉で話すので、理解が出来ないことが多々ある。よくいる自称ベテランマーケターだ。横文字の連発で結局何を言っていたかが分からない時がある。正直、こちらは米国に17年いたわけだから、英単語の意味くらい分かる。でも、その意味が分かったとしても、文章の全体の意味が分からない。だから、筆者は面接で横文字連発のマーケティングディレクターが相手だった場合、入社に興味がない意思表示をするようにしている。
実はよく分かっている

一方で子供も部下も実はよく分かっている場合が多い。自分なりの理解で、期待をしている回答は導き出せていることはある。言葉で聞くと分かっていないような返答でも、資料作成を依頼すると、分かっていないと出来ないところまで出来上がっている。

子供も大人も結局、出来ない人はいないと思っている。ただ、上手く伝えられないだけなのだ。

また父の例を挙げよう。

父は、引退後、外部とのコミュニケーションを絶っているので、しゃべることが出来なくなってきている。言葉が出てこないし、耳も弱く何を言っているのかも分からなくなってきている。年を取った証拠だし、痴呆が始まりかけているのかなと思うこともしばしば。

食事も自分の部屋で食べるようになったため、自分の部屋にもっていくのだが、よく食器を落とすため割るようになった。これも痴呆が進行している証拠だろうと思っていたが、最近分かったのは腕力の低下が大きな原因だった。

何年か前に帯状疱疹になったのだが、その際に左手の力が大幅に弱くなった。上がらなくもなった。筆者も帯状疱疹になった経験があるので、その痛みがどれほど痛いものなのかはよく分かっている。また治った後も、刺激痛ではないものの、痛みの名残を感じることは何年もあった。

その影響がまだ残っているようなのだが、本人もそれが原因だということを分かっていないため、家族に伝えられず、「また割った~!」と言われる毎日を送っていたのである。

万人が思っていることを想った通りに話せると思ってはいけない。自分の物差しで人を図ってはいけない。相手にいかに話させるかがリードする人の役目である。


実はよく覚えている。

しゃべれないが故に、子供はよく見ていると思う。見たことがそのまま行動に反映される。言葉もそうで、良しあしを決められないので、聞いたものをそのまま口に出す。なのでいじめなんかは典型的な例で、いじめをする子供の両親は、それに関係する言動が家庭であるはずだ。無意識的に差別的な行動をしたり、近所の人や学校の特定の子供を避けるようにほのめかしたりする言動があるはず。

そもそも、いじめや仲間外れなどの概念が子供は元々ないのだ。しかもいじめの仕方や仲間外れの仕方を教えてくれる学校や施設、教科書があるわけでもない。全ては、見たか聞いたかのどちらかだ。

子供のいじめが増えている理由は親にあるが、その親を作ったのは企業だと思っている。両親が貧乏な時代に育った人が、陰湿ないじめをするとは思えない。なぜなら、そんなことを考える暇もないくらいに貧乏で忙しいし、学もないからだ。

子供の記憶力をいい使い方をしてあげて欲しい。単純に、庭の植木の水のやり方、掃除の仕方、言われた通りにやりなさいというのではなく、ただ見せるだけだ。見る回数が多い程、それがその子供の普通になる。

会社においても、あーだこーだと部下にうんちくを吐くのではなく、自分がやっている姿を見ていれば、自然と周りは、そうやってやるんだと思い見よう見まねでやるようになる。実際にはやらなくても、やっている姿を頭に思い浮かべることはできる。


教えてもいないのに親を見て既に学んでいる

子育てに密接にかかわっている親御さんであれば、ある日突然、教えてもいない言葉話すことを経験していると思う。今の時代、YouTubeもあるので、新しい情報は無限にあるといっていい。明らかに自分は娘に対して話していない言葉でも、既に知っている。話せるということは、意味も知っているということだし、使い方も正しいところを見ると、やはり「親がなくとも子は育つ」という言葉は本当だと実感させられる。

同様に、会社においても、部下の評価をとにかく下げている上司がいる。しかし、その部下が嫌気がさし、転職をした先の企業で頭角を現すという事例がある。それは、急に能力が上がったわけではない。もともと、その能力があったわけだが、口うるさい上司が能力を押さえつけていたからに他ならない。

自分が、経営者だったら、吠えている人は上司には絶対抜擢しない。人材の能力を引き出すのに吠えるスキルは必要ではないと思っている。

子供の世話をしないまま子供が成人を迎えた父親は、恐らく部下の気持ちを理解するのは難しいだろう。分からない人の気持ちを理解するには、自分が理解できない状況にいなければ難しいからだ。

子育てに密接にかかわると、上手く子育てを出来ない瞬間を経験し、どうすれば上手くやれるかを考える機会が何度もある。これこそが、組織で部下や上司と向き合う時のヒントになることを覚えておいて欲しい。