リーダーのロールモデル

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いつの時代もスターだけを集めた組織やチームでは、各スターのいい面が活かしきれないというのがある。笑いを取れる人気芸人も、滑り芸人がいるから余計にネタの才能が冴える。これが周り全てが、漫才も落ちも間も秀逸な芸人で囲まれていたら、その芸人の笑いの才能は半減される。

ただスターの定義でこの方程式も幾分変わる。

集まったスター全員が目立ちたがり屋である場合は、上手くいかない。しかし、スターでも目立つ部分は人に譲り、自分は目立たないがチーム全体を陰で支えるスターであり続けたいという人達の組み合わせで出来たスターの集まりであれば上手くいく。

筆者の時代は、体育会系が昇進に良しとされた。今でいう草食系で文科系でという人材はトップには慣れないとされてきた。リーダーもミリタリータイプのトップダウンが通例だったのが、同じ目線で目標を達成するリーダーシップも出てきた。

それでも、リーダーシップに必要なのは、「自分が動く」ことではなく、「人を動かす」ことである。小さい規模の会社であれば、リーダーや上司が動けば、事足りるだろうと思うが、その分、部下や他の従業員は育たない。誰しも成長には実践が必要なのだ。実際に動かなければ何事も分からない。それが選手と監督の違いだ。大きな組織では、監督如何でその成績は大きく変わる。

部活の世界でも、ゲームキャプテンとチームキャプテンと2種類いる学校もあると思う。少なくとも筆者の兄のチームには二人いた。ゲームの得点王が必ずしもチームを率いるのが上手だとは限らない。得点や技術はそこそこだが、チームをまとめるカリスマを持つ選手はまた別にいたりして、そういう人物がチームキャプテンに選ばれる。

企業にはカリスマがなかなか育たない。カリスマは、もしかしたら育てられないのかもしれない。もって生まれたもののような気もする。リーダーと決められずに、周囲から自然とリーダーと思われている人は資質がある。ただそういう人物が少ないだけに、多くの企業では、まとめられない人も上司に沢山いる人がいる。

上司が出来ない場合も利点があって、上司が出来ないから部下がお膳立てを全てするので、部下の能力が上がっていく。しかし、この秀逸な部下が上司になったら人をまとめられるのかと言えば、また違う次元の話になる。

リーダーや管理者は、育てないといけない。数字を出すときに使うスキルと人をまとめる時に使うスキルは違うという認識と、まとめるスキルがないのであれば、身に着けるしかない。

何より、「何が必要かを知る」ことが「何を身に着ける必要がある」かを測れるので、部下を育てる時は、「管理職に必要なスキル」をしっかりと教えてあげるべきだろう。背中を見て育つのは、勘のいい部下だけ。それ以外の部下は、しっかりと伝えなければ分からない人も大勢いることを上司は把握しないといけない。

日本は、生産性が最も悪い先進国とされているが、これを克服するのは「上司改革」だと思っている。マインドセットが数字を達成することがゴールになっているような気がする。100点を目指したい時に100%の努力をすると、実践では80%程のスコアになると思う。

努力をアクションと考えるなら1アクション1%の達成と考えて、120個のアクションを取れば100%くらいで着地できるはずだ。なぜそうなるかというと、ビジネスの世界では、自分が思ったやり方で思った通りの売上が上がらないからだ。

40以上の女性をターゲットに開発した商品を、40以上の女性だけにリーチするように販促したとする。しかし、買うか買わないかは、40以上の女性の消費者が商品を見たり試したりしたときに決めることであって、開発側は決めることではない。相手あっての数字のため、アクションと達成率には必ず誤差が出る。

よく上司が、当月の締め日まであと1週間しかない場合に、10%の未達だったということで、どこかで売りが立てられないかと詰め寄ってくる。まるでパワハラのように詰める上司もいる。その短い期間で上げられる売上は押し込みしかない。押し込めば来月の受注がスローになるだけで、結局首を絞めるだけ。確かに数%縮めることはできるかもしれないが、筆者が思うに上司から言われて何とか上げた売上と、そのまま月を終わらせたときの売上だと、ほぼ変わらないと思う。

達成するかしないかは、大抵月初に分かる。進捗の良さと決定している納品の金額で分かる。細かく予測しないと、ぎりぎり達成できるかどうか分からない場合は、未達になる。この方程式では分からない売上は特需。特定の需要に対して大量に製品が売れる場合は予測不可能の時が多い。

企業で働いていて一番しんどいと思う時は、アクションを増やすために、色々と売上を取れる策を練った後、ことごとく上司から却下される時だ。アクションにはお金もかかるかもしれないが、その金額もかなり少額で抑えられる時でも、上司一人の感情で却下される。これは国内も海外も関係ない。

筆者の持論で、結果的に上手くいくことが多いやり方は、「見切り発車」だ。上司の多くは嫌うが、「見切り発車」をすると、公言しているのと同じことなので、一度始めたことをやり遂げないといけなくなる。

この「やり遂げなくてはなくなる」瞬間を出来るだけ多く持つことで道が切り開けると感じている。

上司から却下される理由で

  • 自分はその売り方が好きじゃないから
  • こちら側が煩雑になるから

という理由の時だ。

しかも、以前に誰も試したことがないことだから分からないのに、こちら側の仕事が大変になるからだ、と決めつけてしまっている点

楽して稼ぎたいという点。

楽して稼ぎたいのは誰でもそう。それが効率よく稼ぐということだろう。でも、何が効率よいかを見つけるために、非効率を知る必要がある。それを最初からトライしないというのが嫌いだ。

自分の上司でもなかったが前職の先輩で経験豊富な先輩がいた。一度やったことで上手くいかなかった例の場合は、上手くいかないからやめた方がいい、ということは普通にあるが、あれだけ経験がありながら、前例のないことには、やってみよう。やったことがないから上手くいくか行かないかなんて分からないから、とよく言っていた。

筆者の現職のチームに対する姿勢は、その先輩からの影響を受けている。

米国での大先輩は、失敗という失敗を既に何度も経験して、「これはやってみたけど、こうなったよ。やる人によって結果は分からないから上手くいくこともあるかもしれないけど、自分が経験した失敗も可能性としてあると思うよ」とアドバイスをくれていた。

それ以来、筆者は、失敗歴を作るようにしている。そうでないと、説得力がないからだ。部下にも失敗をしてもらわないと、自分でそれが失敗に繋がると体で覚えてもらえないと思っている。なので、やろうと思ったことは、見切り発車してくれ、とお願いしている。

人を動かすのは、相手の言うことを否定することを最後の手段にすること。何でもやらせてみる。その際に、自分の要求ばかりをやらせるのでは、人は動かない。目指す方向が同じであるなら、多少やり方が異なっても、本人に全てを任せるべきだ。管理職の仕事は、社員を成長させることでもあるのだから。