見下さないリーダーシップが継続的な勝利を生む
優秀なプレイヤーから昇進したリーダーが陥る上司像
年齢に限らず、優秀な営業マン程、管理職に昇進すると部下を動かせないことが多い。自分で動けばエースストライカーだけど、その数字は、他でもない、あなただったから売り上げられた数字でしかない。同じやり方を部下が完コピできれば、同じ数字も上げられるだろうが、システムから上げた数字ではない。
こういうプレイヤーは、中小企業では当たり前のようにいる。というよりも、部下を率いるほどの大きなビジネスまで育ってないし、それ以上に大きくしようというマインドセットとノウハウもないことが多い。分からないから、それ以上を求めない、というのが正確ないい方だろう。
もともとチャンスは、何もないところに存在しているものだし、既存の市場へ飛び込んだところで、何番煎じになるだけで、ある一定の売上以上のものは得られない。エースストライカーの問題点は、割り当てられた枠組みの中でトップをとれるが、枠をはみ出した瞬間、何をしていいのか分からなくなる。
言い方を変えると、誰か守ってくれる人がいるから、戦地へ飛び込める。自分がパイオニアとなると、誰も知らない地へ踏み入れるので、地雷を踏むのも自分、ケガするのも自分、ケガの手当てをするのも自分自身、と誰も頼れないためところでは、パフォーマンスを出せない人が多くいる。
もちろん、管理職になっても、決められた枠組みの中で最大限の収益を出すのであれば、エースストライカーも数字を出せなくもないだろうが、現場の営業マンだった時とは異なり、自分がカスタマーを持っていない場合は、部下の結果でしか彼の成果にはつながらない。とすれば、部下を動かせない上司となれば致命的だ。
リーダーは資質優先で決めた方がいい
リーダーの資質は、語る人によってそれぞれなのかもしれないが、少なくとも私が動こうと思えるリーダーは
- 人の話に耳を傾ける人
- やってみよう、のマインドセットがある人
- 失敗を恐れない人
- まずは自分が実践して見せてくれる人
- 上から目線ではなく同じ目線で共に頑張るという姿勢の人
などを挙げると思うが、簡単に言うと、アイデアをシェアしてみて、やってみようと支援をしてくれる人の下だと成長できると思える。
昇進したのは、資質があったからではない
どういう経緯で管理する側になったかどうかは、大きく分けると二種類だと思う。
- 資質を買われてなるべくしてなった
- 他に候補者がいないけど、外部から採用する予算もないので消去法で決まった。
多くの会社で2を経て上司になった人は多いと思う。
多くの中小企業で働いてきた経験からすると、中小企業なら無理して選出する必要はないと考える。
一度、部長不在が半年以上続いたことがある。営業マンの考えるベストなアクションで月の目標を目指して欲しい、という方針だった。その時期が一番、売り上げたのだ。
抑圧されず、自分達が自主的に話し合い動いたからこそ、なせた業であったと確信している。
卸で働いていた時代、マネージャーはいたが、その人は方向だけを指示して、細かいことは個人に委ねてくれた。その人の下で毎年、過去最高の収益を記録した。科学的に証明を出来ないが、これが事実である。正論が勝利ではなく、予期せずとも起きた勝利は正なのだ。
組織が崩れる原因の多くは人間関係の悪化
働いてきた全ての企業で、つぎはぎ人事を見てきたが、必ず起こるのは
- 業績は上がったが従業員のメンタルは最悪、不信感が凄い
- 業績も上がらず、人はやめていく一方で採用は続きまた辞める
とにかく、つぎはぎ人事の後に起こるのは、この2つ。
理由は簡単。採用の目的が、空いたポジションを埋めることになっているから。
もともと、そのポジションに人を採用するのは、そこから先に何を目指すかが目的のはずだが、往々にして、要職が抜けると、上から最優先で誰かを見つけるようにトップダウンが下りてくる。
人事は必至で探して、最高は見つからなくても不可ではない人を見つける。晴れて入社することになったが、
- 採用された側:聞いてた話と違う。
- 採用した側:思っていたのと違う
と思い始める。やがて、採用した側が自主退職までもっていく卑劣な行動に出るか、採用された側が次の転職先を探して自ら去っていくか、これが数年以内に起こる。
こういうサイクルが起きている企業の特徴は、トップダウンで若い従業員を基本的に見下していることが多い。
分かりやすい兆候は、
- 研修は形だけ行い言うほど教育もしない
- 何故か新人や若い人に対してだけ「呼び捨て」
- 人前で回りに聞こえるように叱責する
呼び捨ては、場所に関係なく、敬意を表していたらなかなか出来ない行為だ。
少しでも自分より人生長く生きている人に初対面で「呼び捨て」するだろうか?まだ周囲が読んでいるニックネームやあだ名で呼ぶ方が何倍もまし。
呼び捨ては、根底に、自分が相手より上だ、といういう意識がある場合だろう。そういう文化は日本には確かにあるが、もう古いマインドの人しか使っていない気がする。
敬意を表せない人に対して、人は心を奪われ行動に出るだろうか?
人を突き動かしているのは、結局のところ、人の心だ。心に響く何かがあるから動くのだ。言われて動くのには限度があるし、いい結果も出ない。自分から動こうと思ったものの先に結果がついてくるのだということを、世の上司達には分かってもらいたい。
上司のトップダウンの指令の下、いい結果が出なくとも、ぎりぎり予算を超える時は実は起こる。これを上司は、「だから言ったでしょ?俺が正しいんだって」て思っている上司は多いんじゃないかと思う。これは続かないですよ。恐怖で人は、短期間コントロールできます。でも、すぐに制御不可になりますよ。
プレイングマネージャーでもない限り、あなた方の部下の成績があなたの成績であり、それが悪いということは、決して部下の責任ではなく、動かせなかったあなたの責任であることを覚えていて欲しい。
行く会社行く会社でパフォーマンスや準備等で優秀な人を見かけるが、こと部下の扱い方に関しては、見下していて満点をつけることが出来ない上司は多くいる。まず、部下に対して「馬鹿」と堂々と言い切ってしまう人に対して、部下が100%自発的に動く人間になるとは思えない。
能力が出来ない部下をもったとして、能力がないからダメだ、と思うか、出来ることだけに注力させるというやり方もある。能力が長けるということがないという前提に立てば、少なくとも後者をさせるだけでもポジティブな数字は望める可能性は高い。
あなたがその部下を受け持つことになり、能力が十分でないと分かったとしても、あなたが採用したわけではないから、極論で言えば、あなたに責任はない。
ただ、あなたが経営者の立場として考えて欲しい。そういう凡人達の集まりが普通の会社ではないですか?あなたも今では昇進しましたけど、入社当時は、何も分からない凡人だったはずです。
色々教えてくれた上司がいたかもしれない。もしくは、そういう上司がおらず、自分で苦労を重ねて今があるかもしれない。しかし、ここで言えるのは、あなたも普通の人間の一人で、出来ない部下と同じカテゴリーに入る人間の一人なのです。
勝者という栄光を得るには二通りあります。
- 勝てる戦いしか選んできていない人
- 勝てない勝負にも挑んで全てに勝ってきた人
この二人が決勝でぶつかれば、2が勝利を収める可能性は非常に高いです。
今まで不戦勝しかしてきていない人でも、100回不戦勝があれば、100連勝のチャンピオンなんです。
あなたが上司になった際、競合がいなかったなら、絶対に部長になれるんです。つまりいい営業マンである必要もなかったんです。ディテールに弱い営業マンがスケールで戦略を考える部長職や経営者になった際に能力を発揮することも十分可能です。
どういうタイプの人間なのかを見抜くためにあなたが選ばれたわけであって、もし見抜けないなら、多く貰っている給料を返上しなければならないと思います。
渡り歩いたいくつかの企業で、CCに多くの人を入れて、一人の従業員をたたく輩がいます。どこの企業にもいます。なぜが全員部長職でした。
叱責することと、多くの前に晒して辱めを受けさせるのは天と地ほどの差があります。誰でもミスをするし、誰でも似たようなミスもします。よく同じミスはダメだけど、なんて言葉を聞きますが、同じミスってしてしまうものなんです。
それを最悪叱責するのは構わないと思います。でも、面と向かって1対1でしてもらいたい。メールでは、本来の温度感より冷たく伝わるからです。大人になって叱責を受けるのは皆嫌なんです。部長のあなただって、大勢の部下の前で社長に怒鳴られるのは嫌ではないんですか?
もし嫌だと思うのなら、自分の部下や他人に同じ辱めを与えないで下さい。あなたでそういう文化を終わらせて下さい。
米国で働いていた時、倉庫を統括する部長が日本人、倉庫を束ねていたマネージャーは中国人、倉庫で働いていたのは中国人と南米人。統括部長は、中国人と南米人を、どうせあいつらにはまともにできないんだから、という姿勢で見下していました。
しかし、営業の現場で、自分で配達しなければならないことも多く、倉庫のリーダーとよく連携をとっていたことがあった。
分かったのは、中国人は、非常にプライドが高かったということ。一度、任されたら最後まで任せてもらいたい、と思っているということ。そうすれば、彼らは、どんな状況でも、こちらを優先してくれる。
恐らく、日本人だって同じだと思います。一度任されて、いいところでトップダウンでチャチャをいれられ、実行不可になることを経験した人は沢山いると思います。トップダウンで停止を命じた上司も、その上の上司から突然NGを食らったはずです。極論、会社の文化をいい方向へもっていきたいなら、社長が本気で従業員と真摯に向き合うことです。
会社の善悪どちらの文化も癌細胞と同じで転移し続けます。病巣を切り取らない限り、血液を通して、様々な幹部へと癌細胞は移動していきます。がん細胞の病巣は、往々にして経営者側にありますので、本当に会社を立て直したいなら、幹部から内科、外科どちらの治療でもいいですが、治療することをお勧めします。