なぜ日本は平均年収が低い常識から抜け出せない?

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日本が平均年収が低く見えるのは、平均年収が低くなっている中小企業が多いからだろう。大企業であれば、それなりに支払っているだろうし、外資系も平均よりかは多めに設定されている。ITとなればもっと高いだろう。

サービス過多が利益を食いつぶす

自分の職歴を振り返ってみると、食品系が長い。その業界で多くを貰える勝ち組企業もあるが、当時の体験をそのまま紹介しようと思う。

最初の食品系は、日系食品専門商社で、いわゆる日本食を日本から輸入し米国へ卸すという卸業務だ。2013年に日本に帰国してからも食品で働いたが、同様なしきたりはまだ若干残っている、そのしきたりは、店舗などのエンドカスタマーが一番立場が強く、卸は損失を埋めるためにメーカーからのリベートを収益を頼りにしているということ。

商社や輸入企業で働いた時は、ことあるごとにメーカーより補填を求めることでリスクを負わないことに気が引けていたし、卸として店舗側に思うのは、不良在庫をコスト割れで大量に卸したにも関わらず、賞味期限日までに売り切れなかったものを、再度返品してくる(これは一部大企業を除きあまり帰国してからは見ていない)。結局、メーカーが全ての補填をする。卸は、店舗へ補填する物品、返品の起伝をするが、その金額はそのままメーカーに請求される。

メーカーが一番嫌がることではあるが、この商習慣を作ったのはメーカーである。

こういう明らかに先方側の管理ミスによる補填は海外は絶対に受けない。卸に品物が到着しそれを受け入れた時点で、基本的にその後見つかった破損や賞味期限によるダメージは卸側の責任となる。

他の例では、倉庫からエンドカスタマーへ納品をした際、段ボールの角がやっとで見えるくらいの丸みを帯びているようであれば、ダメージとして返品してくる。中身は全く無事にもかかわらずだ。日本では、段ボールも商品の一部と捉えているが、グローバルでは、段ボールは商品を守るためにあるとされるため、中身が無事であれば返品してくることはない。こういう昔からの商習慣を当たり前のように繰り返しているため、生産性が悪いと言われるのだ。

前職の経験からすると、基本的に輸入業をしている企業の担当者は、海外から倉庫に届いた商品にダメージがあるのを、毎回当たり前のように目にするだろう。

食品で言えば、飲料を扱っていた時、シュリンクで届く品を、箱から取り出し、中身に異物混入がないかを一本一本目視で確認してから、シュリンクを戻し、箱に戻し、テープで止めなおし、倉庫の棚に戻すという作業を全量検品していたことがある。この作業のために原価が上がるため、店頭価格が高くなり、価格競争では圧倒的に負ける構図となる。これに、段ボールの凹みがある場合は、段ボールだけを別に仕入れ、きれいな箱へ移し替え再出荷させる。この工程にもお金を取られる。

抑えられるはずの経費を抑えられない文化が何十年にもわたり続いていることで、給料にも還元できずにいるのだと思う。

労働力の過小評価が通用する程、国民性に甘えている

もう一つの理由は単純に、我慢をするという日本独特の国民性に甘えている。

日本ではブラック企業の事例を多く聞くが、もともと中小企業の企業運営の仕方が企業体質というよりかは、個人の家の考え方に近いような気がする。上場企業であれば、企業はオーナーではないが、上場をしていない中小企業であればオーナーの考え方がそのまま企業の運営の仕方になる。オーナーが社員を、入替の効くスタッフに過ぎないと考えていれば、人に対する扱いも良くはないだろうし、従業員もその扱われ方や給料がきっと普通なのだろうと諦めて我慢している人は多いだろう。

しかし、それは転職をすることがあまり良しとされていなかった時代の名残で、他の企業を見ていないから、悪い条件もみんなそうだろうと思い込んでしまう。基本、海外では嫌と思えば皆辞めていいと思うところへ転職する、至極当たり前のように感じるが、日本人は、不満を持つのに依然そこで働き続ける傾向がある。だからこそ、オーナーや経営陣も、現在のやり方で回せているから問題ないと勘違いした理解が生まれるのだ。

一番しんどいのは、中規模の会社かもしれない。ブラックのような扱いがあっても、コンプライアンス事業部があるのは、大企業くらいなもの。中小企業は殆どない。しかも人事と総務が一緒になっていることも多く、人事と経営陣はある意味チームメイトであり、従業員を解雇や不当な扱いをすることには耳を貸すも、従業員からの不満で違法な行為があったとしても、人事担当にそこまでの知識がない人も多く、解決するわけではなく様子見で終わることが多い。

前職では、パワハラも普通だった。特に日系企業では海外にいても普通にパワハラの環境がある。

  • 海外で飲料メーカーにいた時は、管轄エリアが営業で一番広いのに、出張費用は一番少なく割り当てらる
  • 社長から「いつでも自信をもって話すところがムカつくんだよね」と客の前で言われる。
  • 部長からメールで「(事情説明の後)殺されたいですか?」と送られてきた。
  • 経営陣からほぼ全部の部署にCCを入れた状態で、メールで非難を度々繰り返された。
  • 新しく入った部長に、初めて会話をした時から「いつ辞める?今日返事してもらっても構わないし、明日まで待てるよ」と言われ、無理難題を5項目くらい与えられ、3つはクリアした。それでも「数字を改善させたのに辞めるって話もおかしいので3ヶ月様子見で再度辞めさせるかどうかを検討する」と続けられた。その後、自分担当のキーアカウントを全て取り上げられ、個人経営の顧客だけを持たされた。
  • 会議の場では、キーアカウントを持っていないので、私の担当の顧客はスキップされる。実質、公開無視状態が1年続いた。その後、社長より新しいポジションをやってみないかと勧められ引き受けたが、内辞の際に「この職はマネージャー職ではないからと強制的に年収10%下がります」と言われた直後に社内にアナウンスされる。

 最終的に人事にも相談したが、外資系で自分のオフィスが法人事務所の一つに過ぎない場合は、そこの人事に話してもただのお飾りが多い。社長が違法に近い社員の扱いやオペレーションをしていても、それをまずいと思いつつ実行する部隊になっていることが多い。

そこで上記、どの場合に関しても、グループの本社でアクションを起こせる人に直接話すことを実行した。

飲料メーカーの時は、私を雇用していた時の社長が、その後異動で、本社の監査の部署にいた。辞めざるを得ない状況を覚悟するので、関係各所に実情を伝えて欲しいと依頼しすぐにプロジェクトチームが作られた。日本からは、海外事業部の定例ミーティングの体で来米し、実情は現場の人間から、担当役員の不正とパワハラ行為に関しての調査だった。私はその後、転職をしたが、程なくして担当役員は受け入れ部署が決まらないまま帰国が決定、その後、自分から退職をした。

「殺されたいですか?」のメールを貰った会社では、総務部長が外部の方だったため、派閥やしがらみを考えずに、どの役職にも客観的にものを話せる立場の人だったため、発言した部長と私と別々に面談、結論として、どちらかが辞めなければ収まらないところまで状況が悪化しているとのことで、私が退職することを選んだ。私は、その後、2つ会社を変わったが、2つ目の会社の営業で当時のお客様を訪問した際、問題のあった部長が突然退職されましたという話を聞いた。

1年間辞めることを強要され続けた会社では、何とか我慢を続けたのち、該当の部長が鬱を発症し退職。その後、社長の計らいで3ヶ月後に戻るも、すぐに鬱の状態は悪くなり再退職。この部長は、当時の社長の前職で部長を務めていた人物で、社長が解雇をしたいと思った人を解雇させるために雇ったと思われた。前職でも約2/3の従業員を入れ替えている。私の前にも部長が就任して1ヶ月ほどして、突然別の部屋へ呼ばれ、「今この瞬間をもって、顧客と代理店への連絡を禁じ、二度とオフィスへは来てはならない」という言葉を伝えられて辞めさせられた社員がいた。

部長が鬱で退職後、社長がその役割を継いで私が標的となった。給料を10%下げられることで自主退職をさせるのが目的だった通り、私は自主退職した。しかし、退職の日、グローバル本社にいる会社のオーナー(当時は、社長を別の人へ譲りマーケティングディレクターとして働いていた)に、名指しでブラックの現状を伝えた。5分もしないうちに返信があり、「報告してくれてありがとう。あなたに害が及ばないよう、個人的に調査を開始します」という簡潔な返信だった。

あなたに害が及ばないように、というのは、社長が私を標的にした理由が、以前、グローバルの営業トップから日本の社長の振る舞いがどうも心配だという、オフレコの連絡が届いたことがある。ヒヤリングののち多くのミスコンダクトが報告されたが、グローバル人事の結論は、彼は悪くない、寧ろ被害者だという内容だった。

そこでそれに関わった人物がひどいパワハラを受けた。そういう内容もオーナーにメールで伝えていたから、個人的に調査するという配慮のある返信をくれたのである。

結果、私が退職した後、社長も退職をアナウンスした。しかも1週間後である。辞めると分かっていて、最後に復讐を果たしたという何とも執念深い出来事だった。

オーナーはその後、パワハラをした担当者に対して従業員アンケートを実施させ、該当上司は、かなり凹むほどの不満を書かれたとのこと。そのうち、一人は退職している。

自分が退職をしないでいられるなら、それが一番だが、企業文化に問題がある際は、修復にまで時間がかかる。その間に、多くの人が標的となり辞めていくことになる。そういう場所は、自分を成長させるのに時間のかかる場所、運が良ければ、退職者が多いことで自分が上に上がっていくことも望めるが、多くの企業は外部から入れることが多い。なので、職場環境を変えるのが一番早い解決方法だと思える。

このように、職場が仕事をする場所ではなく、人を追い詰める場所になっている。であれば、お金を払おうという気持ちになる人が増えないのは当然だろう。

不況になると政府が力を貸すが、正直助け舟を出さず、淘汰させることが民主主義の世の中には必要だし、そうでなければいつまでたっても企業常識は変わっていかない。つぶすことも負債額を最小限に抑える得策なのだ。本当に仕事をしてきた人であれば、他でいくらでも力を発揮できる。そういう世の中に日本もなってもらいたい。それが一番のグローバル化への近道だと思う。