バンドと企業の類似性

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バンドと起業は似ている

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band

本日、大御所ミュージシャンが亡くなった。それほど、熱狂的なファンではなかったものの、非常に気に入っている曲は数曲あった。 Jump、Dreams、Can't Stop Loving Youなどである。

Van Halenは、暫くの活動休止から復活し、サミーヘイガーでツアーを回ったときに1度、デイブリーロスが戻って1度の計2回、コンサートで見たことがある。率直な感想だが、デイブリーロスで戻ってきたときの選曲は非常に退屈なものが多く、サミーヘイガーの時は、知っている曲が多かった。

この手の大ヒットを飛ばしたバンドに往々にして起こるのが不仲説での脱退から解散である。しかしながら、10年ほど経過すると、絶対に再結成する。印税も切れ、収入が必要となるからだ。再結成の事情が違うのは、QUEENくらいのような気がする。Judas Priest、Motley Crue、Posion、Guns & Rosesなど、大成功を収めたミュージシャンは、再結成している。大体オリジナルメンバーで。

不仲でも解散はもったいない

筆者も米国で10年以上バンド活動をしていたことがあるので何となく分かるのだが、バンドと起業は似ている。

  1. バンド結成→起
  2. バンドに加入→転職
  3. 作曲→製品開発
  4. レコーディング→商品化
  5. ライブ→広告宣伝
  6. 告知→PR活動
  7. レコード契約→株式上場
  8. 解散→退職

 そっくりだ。

 

バンド結成→起業

バンドの結成は、アマゾンのマーケットプレイスで口座を開設して、自分が持っている持ち物を中古で売っていくのに非常に似ている。非常に粗削りな仕上がりで、とにかくライブや作曲を繰り返して、精度を高めていくステージだ。と同時に認知も上げていく。

続けていくうちに人脈も広がり、次のアイデアが見つかり、トライ&エラーを繰り返していくところは、非常に企業で働くことにも繋がる。

 

作曲→製品開発

時代時代で曲の流行が異なるため、その流行に影響を受けながら楽曲も変わっていく。企業での商品開発と同じだ。写真と同じように、作曲も捨て曲が多い。しかし、多くの捨て曲の中から、大ヒット曲が1つ生まれる。某大手飲料会社の年間の開発数は、年間100商品。その中から運が良ければ1つヒットが生まれる。

消費者は、この100種類が開発され販売されていたことすら知らない。バンドの曲も同様、何全曲と作曲され特定地域でしかライブや楽曲の販売がされないため、死ぬまでその曲を知らない人が殆どだ。世の中に知られるためには、どんなにミュージシャンのスキルが高くとも、楽曲が良くとも、世の中に出すプロがいなければ、皆があがめるスターにはなりえなかったのだ。

 

レコーディング→商品化

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recording studio

作曲が完了すれば、その試作品をレコーディングする。音楽業界で言うデモ作成だ。アメリカでは、このデモを作成し、プレスキットと呼ばれるエージェント向けの資料を作成して、エージェント契約をしてもらうために、プレスキットをばらまく。素人の時は知らなかったが、どんなに凄腕のミュージシャンでも、レコード会社は、マネージャーを通さなければ、デモを聞いてくれない。小さなレーベルは別だと思うが、少しでも名の知れたアーティストを世に出しているレーベルは、弁護士、またはマネージャーがいて初めて曲を聴いてくれる。そうでなければ、届いたメディアキットは、そのままごみ箱へ運ばれる。

 

ライブ→広告宣伝

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live performance

アルバム一つ分のレコーディングが完成したら、近隣のライブハウスにブッキングを入れる。運が良ければ、名の知れたバンドの前座をやらせてくれることがある。時には、車で数時間のところで遠征するなんてこともやった。先述した中に、マネージャーや弁護士を経由しないとレーベルは、話を聞いてくれないと話したが、自分達だけでどれだけのことが完結できるか、そのプロレベルをマネージャーも見ている。

自分で動ける人を選ぶ。オーディションを通してレーベルとの契約を掴んだ人は別だ。そうではなく、地道にバンドを組んでと全てを自分達でこなしているアーティストに関しては、どれだけのフォロワーを自分自身で獲得できたかで、そのアーティストのカリスマ性やポテンシャルを測っているのだ。

ライブするだけではなく、ライブの告知は、どのようなことをしているか、ポスター貼り、SNSでの告知、YouTubeInstagramFacebookを使いこなした広報活動がどれだけできているか、まさに企業のそれと全く変わらない。唯一バンドにないのは、その活動をしても収入は入ってこないということだ。

 

レコード契約→株式上場

これがいわゆる企業で言う投資家にあたる。多くのミュージシャンが勘違いしていることが、この契約という段階で起こっているので説明しておく。

投資家という言葉を使ったのだが、レコード会社もミュージシャンには先行投資を行う。英語では「Recoop」という単語が使われる。簡単に日本語に置き換えると、「立て替え」のようなもの。

レコードを作成したとしよう。自費制作をした人なら分かるかもしれないが、出来上がった楽曲は売れるまでお金にはならない。しかも、当時主流だったCDは最低でも500枚くらいは作らないといけない。それに先にお金を払うことになる。契約ミュージシャンともなれば、その枚数は膨大であり、それを肩代わりしてくれるのがレコードレーベルだ。

簡単な例で説明しよう。

CD制作に1000万かかったとする。これが先ほど申し上げた「Recoop」された金額だ。同様に制作時にレコーディングスタジオを抑えるわけなので、これに300万かかったとする。合計1300万。

出来上がったCDでツアーを回ることになる。ツアーは必ずスタッフが必要だ。ライブハウスを回るならまだしも、ホールツアーを回るのであれば、なおさら相応の人数のスタッフと機材が必要となり、それもレンタルとなる。これで500万かかったとしよう。ここで合計1800万だ。

PVを作成して200万かけたとする。これで合計2000万。

この金額がレーベルが先払いしてくれている金額だ。アーティストは、この金額を、CD販売、グッズ販売、チケット販売、もしスポンサーがついてくれたらスポンサー料から返していかなければいけない。仮に2000万を今回のCD制作からプロモにいたるまでにかかったとすると、その2000万はレコード会社に返すお金となり、アーティスト側の収入は0だ。

よくレーベルに騙されたという話も聞くこともあるが、Recoopという言葉を知っているだけで、契約ミュージシャンの勝ち組か負け組かが決まる。

 

解散する際の注意点

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disband

メジャーとの契約をしていないのであれば、解散の際に注意なんていらないが、自分が職業として契約している場合は、正直、仕事としてある意味割り切るべきだ。

あなたがボーカルで、そのバンドの人気もあなたという存在により天まで上り詰めたとする。しかし、解散すると不思議と集客力は落ちる。

理由はいくつかあるが、筆者が良く思うのは、

  1. ファンは、バンドの中にいるあなたが好き
  2. バンドだったから、曲が良かった。
  3. バンドだから、それぞれのファンが集まって大きな集客を生んだ。

と考えられる。ボーカル以外全員が抜けるのと、ソロ活動はある意味同じだが、バンド名を引き継いだままだと、ボーカルだけが残ることになったバンドでも集客を維持できる。しかし、Guns & Rosesからアクセルだけが抜けて、Axle Roseという名前でソロ活動をしていたら、恐らく集客は大幅に落ちたはず。

両方ともに失敗した例が、SKIDROWというアメリカのバンド。ボーカルのセバスチャンバックにカリスマ性が非常にあった。筆者も曲も好きだったが、際立ってボーカルのセバスチャンしか見ていなかった。結局、バンドは不仲になり、ボーカルだけが脱退。

セバスチャンバックは、ソロ活動をしSKIDROWの曲を多々演奏してくれるも、集客はできず。バンド側もまた新たなボーカルを加入させ、同じバンド名で続けるも、セバスチャンを欠いたバンドには人は集まらない。

悲しい事実に聞こえるかもしれないが、バンドを組んでいる人は、真摯にこの現実を受け止めて欲しい。もしあなたがボーカルなら、解散だけはしないことだ。メンバーが全員辞めるというなら、解散ではなく、全てのメンバーを新たに加えて、尚同じバンド名で続けるべきだ。

何年か後に、心の傷が癒えて、脱退したメンバーが戻るようなことがあったとしても、脱退から再加入まで、ファンベースを維持してきたのであれば、集客も認知度も収益も落ちることはない。

もしあなたがボーカル以外であれば、次のことを考えて継続か解散、または脱退を考えるべきだろう。

  • バンドの人気の理由がボーカルに集中していない→新ボーカルを加入させても大きく集客に変動があるわけではない。
  • バンドの人気の理由がボーカルに集中している場合→脱退しても引き続きバンドは人気を維持するか、さらに人気が出る方向で生き残る。

強制に解散させることはないと思う。日本では、カラオケで歌われれば印税も入る。解散しても尚、それは続くわけだし、人気が上がらなくても一発ヒットを出したら20年ほどは印税が続く。20年が経過したら、ベスト盤みたいなものを作りRemasterとかしたら、当時のものとは違うものができるわけだから、印税もまた新たに貰えるでしょう。

VanHalenに限らず、どのミュージシャンもGreatest Hitsが出ているのは、そういう事情があるからだ。

どんなバンドも、カラオケで歌えるような曲を1つか2つは当てた方がいい。しばらくは印税が入るだろう。しかし、作曲にも関わっておらずクレジットされていない人の場合は話は別になってしまうのは、悲しい事実ではある。それがエンタメで生きていくという厳しさなのだ。

 解散をする時は、戦略的に解散を利用するのがいい。契約中、その契約内容が遂行されないまま別のレーベルに乗り換えようとすると、今後、どこも契約を結んでくれなくなる。つまりどんなにレーベルにお金をだまし取られているとしても、我慢して契約内容を履行するべきだ。しかし、どうしてもそこまで自分の身が持たないとなったときは、ここで解散という行動に出ると、契約不履行とはならない。晴れて別レーベルと契約が結べるというわけだ。

騙すという言う行為は、騙される人がいなければ発生しない。騙されるのは、無知からくる。とにかく、どんなことにも常にアンテナを張って最悪の状況をいつでも切り抜けるように知識を蓄えることが、成功への近道だと筆者は考えている。