革新派も基本は同じ考え方
イーロンマスク氏は、イノベイティブな人物だがGAFAのようにITの業界ではない。自動車のようなConsumerが使う商品や、ロケット、ハイパーループ、スペースXなどB2Bやインフラの産業のイノベーターだ。
一見すると店舗を回ることを非効率に思っていそうだが、全くそんなことはなく、どちらかというと、日本の昔からの泥臭い営業に近い感覚を持っている。消費者の声を聴く、現場の声を重視するということに重点を置いている。マスク氏の記事を読んでいると、日本が言い訳大国に聞こえてくる。
現場の人間には、もっと店を回れと叱咤する。現場の人間は必至な思いで客を訪問し何かしらのニーズを持ち帰る。筆者の多くの会社での就労経験からすると、ここまではいいんだけど、この後が社員のモチベーションを下げる。
企業の上層部は、売上を上げることがゴールになっていて、顧客のニーズを満たすということが、ゴールまでの道のりにあり今やれる範囲で対応してあげる、というスタンスが本当に多い。勿論、何でも間でも顧客に合わせていたら利益も出なくなる、という考えも一理あるが、であるなら顧客目線で考えろ、とは言わないで欲しい。
お客は、元来、わがままなものである。
わがままには、多くのニーズが眠っている。面倒くさい、にも多くのニーズが眠っている。二つに共通するのは、「自分ではやりたくない」→「誰かがやってくれるなら」+「リーズナブルなら」やってみたい、というのが顧客心理だと思っている。
自分が客の立場で考えれば分かる。職場であれば、
面倒な作業は外注したい
→ここにお金のチャンスがある
外注先を探したが、全て高い
→業者はここでチャンスロス
結果的に自分達でやることを選ぶ
→一度訪問して高かったところには、なかなか戻ってこない
【営業マン】外注先を探している顧客を見つけてくる
【営業マン】見積もりを出す
【顧客】高いからやっぱりできないな
【営業マン】見積もりの交渉を上司とする
【上司】利益が取れない客は断れ、値段は下げない
ここで上司の言っていることが正しいとする時は、顧客が単に値段を叩いているだけの場合だ。会社の規模にものを言わせ何でもかんでも安く仕入れようとするバイヤーは多くいる。そういう相手には、交渉すらしたくないと思うのが人間の性だが、ここにもヒントが眠っている。
見積もりを聞いた時点で
「えっ、安いんだね」
と思った時は、大抵値下げ交渉はしてこず、そのまま受け入れることが多い。
値下げ交渉をする時は、相場並みの時と、相場を知らずに額面が思っていたより高い場合の2つの場合が殆ど。
経営者のやることは、その感覚で卸せるサービスが提供可能なのかどうかを模索することだ。高いからには、それに伴う何かが困れているからだ。
付加価値という言葉を直ぐに口にするマーケターは多い。しかし、買う側の多くの人が、その付加価値は必要ない、自分が欲しいというものだけを買い、それだけにお金を払いたい、と思っている。
特にミレニアル世代のように、高度経済成長時代の人よりも給料が少ない世代になれば、買うものやサービスを吟味して、必要なものだけ欲しいと思っている。
昔のようにお金を払う世代になって欲しいなら、企業はもっと若い世代にお金を払って雇うべきだ。結局消費を減らしているのは、企業が労働者にお金を払わないか払えない状態が多いからだ。もっと消費者の心の中を研究するべきだろう。
バイヤーと消費者が思うニーズの乖離
世の中には、発売から終売まで一度も見ることなかった商品がかなり多く発売されている。地域限定ならまだしも、全国で販売しているものでもだ。
メーカーは、次から次へと新商品を投入してくる。
卸や店舗へ売込に行くと、バイヤーの判断でこれは売れる、売れないという足切りがある。9割型、他で売れているものを欲しがる。が故にどこの店に行っても、売られているものは同じなのだ。どこへ行っても同じだから、わざわざ店を選ぶこともない。もっと言うならネットで買えばいい。
リテールの楽しみは、回遊をしてぱっと見で、面白そうな商品を見つけて、デモンストレーションで体験して、欲しいかも、という気持ちまで引き上げていくところにある。
最近はPBが出ることで安く買えるようになったのはいいけれど、その代わり、面白い商品に出会えることがなくなった。TV番組と同じだ。TVの裏方もクレーム対応やスポンサーとの兼ね合いで、番組を当たり障りない方向へもっていくしかないのは分かる。それならTV局はもういらない。今は個人でもYoutubeで番組作れている。いっそのこと、TV局がそちらへシフトした方がいい。寧ろ、TV局がYoutubeを思いつくべきだったのだ。
これもマスク氏の言っている通り、店舗や工場を回り、現場の声、消費者の声を聴いて生のニーズを聞き、実現していくべきことを、まず、自分達側で変わりたくない部分を決めて、変わりたくない部分にいくつもあったニーズを排除してきた。それがどこにでもいる上司の姿であり、世の中を変えることは一生ない上司や経営者の姿だ。
近くのAeonの話をしよう。Aeonには多くのスーパーやリテールが買収されている。看板だけが変わって中身は、さほど変わっていないところも多い。変わったことと言えば、PBが置かれるようになっただけだ。今では、どこへ行ってもAeon。AeonのPBだ。
近くのイオンは、Fish売場が小さい。もともと種類も少ないが、夕方に行けば棚の多くは空っぽになる。これは店舗側からすると、廃棄が少ないいいオペレーションと言える。問題は、空になる理由だ。
- 本当にニーズがあった
- それしかないから仕方なくそれを買った
筆者は2だ。時間がある時は、Joyfulにあるジャパンミートに行った方が肉が安くてボリュームたっぷり。イオンのちょっと先に行けば、野菜が安い別のスーパーがある。少し手前にあるというだけでイオンになっている。
立地の条件で顧客獲得をできているイオンは、戦略的に勝っていると言える。しかし、つまらない。折角、最初の関門の立地で客を取り込めているのに、ここまで楽しませられないイオンて何なんだろうと思えてしまう。
イオンとセブンでいいと思う点も上げよう。
両方とも店舗の拡大は早い。サービスの多角化も早いと思った。その一つは銀行だ。セブンもイオンもATMがあり大抵どこの銀行のカードも使えるので、銀行のATMはいらなくなった。セブンに関しては、海外送金もWestern Unionと連携して行える。ここは海外送金がどれだけ行われているのか、よくマーケティングされていると思う。
イオンの銀行に関して、銀行より利息が少し高め。もはや銀行の役割は、融資のみだ。もし仮に、セブンやイオンがメインバンク並みの融資までを執り行えるようになれば、メインバンクもいらない。特に融資課がしていることは、ルール通りにやっているのだから、ある意味AIが出来るだろうし、AIがやれば不正もなくなるだろう。
AIが暴走したら困るが、AIが故障した際に問題を修正するAIもできれば一石二鳥。AIが人間に叶わないとすれば、直観のひらめきやアイデア、創造性だと思う。修理も、理論的なもの。トラブルシューティングは、ソフト面であればAIが出来ていいと思う。
ハード面になれば、修理ロボットが欲しいところだ。どの機械を作るにしても修理ロボットと一緒に開発をする。
いずれにしても、ニーズがあり、それに見合う製品サービスを創造するのは人間でないと出来ないと思う。それが経営者の役割だと思う。
一度サービスが出来上がれば、あとはAIだって出来るだろう。
大事なのは、早い段階で見切って次の時代の波が通れる道を開けてやることだ。もし自分達が追い出されるとネガティブに思っているなら、そう思われない人物になればいい。高齢でも健康であれば、まだ学べる。PCを使えない70歳を100人集めて、毎日朝9時から夕方5時まで、同じタスクをさせてみるといい。必ずできるようになる。人間はそうできているのだから。出来ない人生を創り上げているのは、自分自身であることに気が付きましょう。